(7−7)+1 本を読みました

いろいろな花や木には、神話や伝説がありました。


チューリップ・・・新潟県の花にもなっています。   昔、ある女性が提灯を持って庭に入ったらチューリップの花の中で妖精の赤ちゃんが眠っていました。喜んだ彼女はもっとたくさんのチューリップを植え、全ての妖精にチューリップの揺り籠がいきわたりました。妖精たちは用心深かったけれども、彼女が善意でやっていると知ると、褒美としてチューリップバラのような色彩と香りを与えました。また、妖精たちは彼女とその家に幸福を与えたので、末永く幸せに暮らしました。彼女の死後、冷酷な蓄財家がこの家に住み、一番最初にチューリップを抜いて、パセリを植えました。妖精たちはこれに怒り、それ以後何年もその土地は栄えませんでした。けれども、あの女性が葬られたお墓は美しい緑を保っていました。お墓のてっぺんにはチューリップが風になびいていました。時が過ぎ、お墓の花は通行人に踏みならされ、妖精たちは山に引きこもってしまいました。この時以来、チューリップは大きさと輝きと香りを失ってしまいました。


ユリ・・・戦争が終わって、一人の将軍が部下の息子のプリニイを伴って家に帰り、養子にしました。将軍にはタマラという娘がいました。この娘は、世間のことをほとんど知らず、小鳥のように無垢でした。娘が書物について知らないと、プリニイが読み書きを教え、音楽について知らないと、歌や琴などを教えました。二人は一緒に勉強し、一緒に野原を歩きました。二人はとても幸福でした。しかし、将軍はタマラをある国の偉い役人の嫁にすると約束をしてしまいました。それを知ったプリニイとタマラは、お互いに愛し合っていて、別れては生きていけないことに気づきました。けれども、娘は親に忠順で、恋人が一緒に逃げようと言ってもききませんでした。娘は解決策を教えてもらいに、山中の僧を訪ねました。尋ねている間、お供の者は外で待っていました。すると、嵐が起こり、庵に稲妻が落ちました。嵐がやんだとき、タマラの姿はありませんでした。僧は「神が願いを聞き届けてくださったのだ。タマラにはもう憂いはない。御覧なさい、タマラを。」僧の指の先には、一本のユリの花がありました。お供の者はタマラ失踪を伝えに戻りました。悲しみのあまり将軍は亡くなってしまいましたが、プリニイはユリの花のもとへ駆けつけ、花に叫びました。「本当にあなたなのか、タマラ。」すると、「私ですよ。」と、ささやき声が聞こえました。プリニイがあまりにも激しく泣き叫ぶので、哀れに思った神は、プリニイを雨雲に変えました。かつての恋人であるユリに、いつでも水を与えられるように。


エーデルワイス・・・あるとき、一人の女天使が天上界の至福の生活にあきあきして、もう一度この世の苦味を味わいたいと切望しました。女天使は、もう一度肉体の形をとる許可を受けますが、泥にまみれて人間と付き合う覚悟はできていませんでした。女天使の同情的な眼にとってさえ、人間の社会は貧乏、罪業、苦悩、不幸などの悲劇に満ちていました。そこで、女天使はスイスの山々のもっとも高い荒涼とした場所に住むことにしました。そこから世界を見渡すことはできたけれども、俗世に見えることはなかったので、女天使は穢れなき魂によって輝き、眼をみはるような美しさでした。しかし、ある時女天使は登山家達に見つかってしまいました。登山家達は女天使を愛しましたが、彼女は冷たい態度でした。登山家達は「私たちは、あの女性を自分のものにすることができないので、その愛らしい姿を見る苦しみから救われますように。」と、神に祈りました。願いは聞き届けられ、女天使は天上へと戻りました。そして、女天使の人間としての心が、エーデルワイスの中に残ったのでした。


クスノキ・・・ある日本の伝説のとおり、クスノキの精は、大自然の力をしのぐ力を有しています。熱海には、こういった木のひとつがあり、節でごつごつした巨大なクスノキが社寺の森に生えていました。ここにかつて、一人の信仰深い坊様がすんでいました。その坊様が座禅を組んで、瞑想にふける場所は、海を見渡す場所にありました。ある時、この坊様が夢を見ました。浜辺に魚が山のように積み重なっていたので、坊様は海の神々に感謝しようとした、そのとき、目が覚めました。そして、どろどろシューシューという音とともに、巨大な雲が海面から立ち上がりました。海底火山の噴火でした。そのガスのために魚が死に、浜辺に打ち上げられたのでした。人々はガスや灰から逃れるために、山に走りました。突然、地面が大きくぐらっと揺れ、そこに生えていたクスノキが真っ二つに割れました。すると、その中から美しい女仏が現れ、クスノキの一枝を差し出して、煮えたぎっている海の上でこの枝を三度振るが良い。そして、三度振ったら「観世音菩薩」と唱えながら枝を海に投じなさい。と坊様に命じました。坊様は急いでそのとおりにしたところ、海は静かになりました。今日、寺の坊様が口々に言うには、あの女仏は観世音菩薩その人に違いない、と言います。



などなど。本当にたくさんの植物のことが書かれています。
ぜひ読んでみてください。(表紙は薄い灰色のような色をしています。)

花の神話と伝説 (1985年)

花の神話と伝説 (1985年)